シャトー・コス・デストゥルネル(COS D'ESTOURNEL)はボルドー、メドック地域のサンテステフ村にあるグランクリュ、2級で、つまり昔から評価は極めて高いのですが近年一層評価を高めています。
そこが辛口白ワインの生産を開始しました。前にこのブログでちょっと書いたような気もするな。メドックという場所はボルドーでは珍しくほとんど白ワインを作っていないのですが(注)最近白を造るシャトーが増えて来ていて、コス・デストゥルネルも加わったわけです。
そのボトルを初めて見ました。これがすごいんですよ。ボルドーは瓶を濃緑色に着色するのが伝統なんですが、白ワインは無色透明が多い。その中でコス・デストゥルネルは濃緑色の瓶を使い、しかもラベルも、キャップシールも濃緑色なんです!全てが真緑なんですね。エコブームにあやかって「グリーンボトル」なんですかね?
ネットではラベルしか見つかりませんでしたが、これです。
これは赤ワインのラベルをポジに反転して黒い部分を緑にしたんですね。この緑をキャップシールに使っています。真緑なのを想像できますよね。
ところで、これも値段が問題。いい加減値段の話から離れたいんですが、見たときにうんざりしたので書かないわけにはいかない。
39,900円でした。
4万円というびっくり値段ですが、私が驚いたのはもう一つ理由があります。辛口白ではボルドーで2番目の値段だからです。
ボルドーの辛口白ワインはほとんどが安酒ですが、超高級にして高価な白ワインもあるんです。そのほとんどを蹴散らして、いきなり2番目の値段になったのです。まだ品質が判らないワインが。
ボルドー辛口白を値段順に並べると、
1.オー・ブリオン・ブラン
2.ラヴィル・オー・ブリオン
3.パプ・クレマン・ブラン
3.イグレック
3.ヴァランドローの白
3.パヴィヨン・ブラン・デュ・シャトー・マルゴー
になります。3が沢山あるのは、この辺はほぼ同価格帯で値段競争を繰り広げるからです。しかし1,2位はこれで固定です。
ここにコス・デストゥルネルが食い込み、いきなり2位に躍り出たのです。ラヴィル・オー・ブリオンも4万円を窺う勢いですが、まだそこまで達してはいません。或いは、ラヴィルとコスで2位争いかも知れません。いずれにしても、高い評判を数十年にわたって維持しているラヴィルと同じ値段にいきなり追いついたわけです。
説明が書かれています。
2005年産の生産量は僅か3000本(2006年は4000本の予定でその後数年かけて1万本まで造れたら嬉しい・・・by JGプラッツ)。ソーヴィニョンブラン80%、セミヨン20%、ニューオーク50%の典型的かつ理想的なボルドー・ブラン。ラヴィル・オー・ブリオンやドメーヌ・ド・シュヴァリエのブランと同じレベルにあるといえるがメドック産では最高峰でエール・ダルジャンやブラン・ド・ランシュ・バージュ、パヴィヨン・ブランよりも高額。とにかくかなりの希少品。RP92。日本ではエノテカが、英国ではBBRが独占輸入。
エール・ダルジャンはムートンが作る白。ブラン・ド・ランシュ・バージュと同様素晴らしい白ですが、価格的には問題になりません。RP(パーカーポイント)92点は確かにラヴィルやドメーヌ・ド・シュバリエに近いですが(後者の安さは異常)、上の文章から滲み出ているように「希少品」だからの値段なのは明らかです。
ヴィンテージは2005年。そのせいもあるでしょう。でも、ここまで単に「珍しい」からという値段が通用するようになるのは、最早バブルだとしか思えません。
ボルドーの白に反応するのは私のようなマニアで、ブランド好きの方には訴求力が弱いはず。この値段で売れるのか気になります。売れ行きが悪くて値段が下がれば、マニアの私には嬉しいんですけどね。
ボルドーの生産量は赤が圧倒的で、ボルドーと言えば赤というイメージなんですが、結構白も作っています。メドック、サンテミリオン、ポムロルというボルドーで最も高級なワインを産出する地区は白を造っていないので、その印象もあるでしょうし、ボルドーの白が大概は安酒なのは事実です。
ボルドーの白で輸出されるものは多くが「ボルドー」という基本名称かグラーヴ地区のもの。グラーヴはなかなか良い白を産出し、「高級」白ワインも造っていますが、大部分は安酒扱い。他にアントル・ドゥ・メールという白だけのアペラシオンもありますが、みごっとに安酒です。(最近話題のモンペラはこのすぐそば、白も人気有るよ)
しかしそれは、鶏が先か卵が先かではあるのですが、安酒で儲からないから作らないという経済原則です。今では白を全く造っていないポムロルもかつては白の産地だったそうです。潜在能力は恐らくあるのです。
サンテミリオンでも上に挙げたヴァランドローの他モンブスケでも白を造り、かなり良い(高級な)ワインになっています。まだ追随する動きはないようですが、今後増えてくるかもしれません。
メドックではもっと白の生産が増えていて、本文に触れたマルゴー、ランシュ・バージュの他グランクリュではタルボ(歴史は長い)、ラグランジュ、プリューレ・リシーヌが造っているし、ブルジョワ級ではやはり歴史の長いルデンヌの他セネジャック、グレイザック、グーレ(コス・デストゥルネルのプロジェクト)などがあります。全部を飲んでいるわけではないですが、グランクリュの造る白は侮れない品質です。
もっともそういう高品質なワインは生産量は微少です。多くは「スッキリと飲みやすい」タイプで世評はなかなか高くなりにくいものがあります。それでも、ボルドーにも少ないながらちゃんと白を造る環境はあるのです。売れそうにないから、やらないだけです。


