2017年07月20日

発見したのは箒神だった

最近神社趣味から踏み込んだ中世神道から更に訳わからない方向に進み、関連するこ難しい本をよく読んでいます。かっこよく言えば知のワンダーランドなんですが現実は中々ついて行くのにも苦労し、楽しいと同時にくたびれます。

特に寝る前に読むと、頭を使わなければならずかえって眠れなくなることもあります。そういう時にはライトな本で頭も軽やかにしたい。ネコの写真集が多いですが、信仰関係では「医と石仏」という本が気に入っています。

こう書くと中身が薄いみたいですが、昨日のシャルツホフベルガーのように軽くて淡いけど実に味わい深い本です。サブタイトルは「庶民の治病信仰」で結構ハード。著者は会田秀介氏、職業はお医者さんで、かつ日本石仏協会員と奥付にあります。会田氏が撮り続けた石仏の写真、正確には仏じゃないものも含まれますがそれは些細なことなので「石仏協会」なのでしょう。
見開きの右頁に説明、左頁に大きい写真1枚です。著者の人柄がにじむ語り口、治病の観点から庶民を思いやる内容、読んでいるととても落ち着きます。なので何度も読み返し、昨日もまた読んでいました。

たまたま開いた98頁。写真を見て、あれ、どこかで見た気がする、と思い所在地の住所を見てみると「神奈川県中郡大磯町大磯 熊野神社」。
大磯って今年行ったし、熊野神社もあったなと考えて思い出しました。やっぱり見ていたんです。こういう石仏です。(もちろん私の撮った写真)

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この石仏が何だかさっぱり判りませんでした。着物から女性像とわかりますが、肩に背負っているのはいったい何なのこれ?葉っぱのついた銀杏の枝か、七夕の笹飾りか。巨大ブロッコリー?

その謎が解けました。「箒神」なのだそうです。この持ち物は箒だったのです。

私の写真だと陰になっていますが、顔を傾けた側に髪が流れています。強風に吹かれているんでしょうか。

著者の説明によれば、箒神は出産を守る「産神」(うぶがみ)なのだそうです。山ノ神や道祖神、しゃもじ神に便所神(!)なども産神だそうでその仲間。産室の隅に箒を逆立てる習俗もあったそうですよ。
ただ、なんで箒がお産を軽くし、よい子をもたらすのか触れていません。こういう時に役立つコトバンク(平凡社世界大百科事典)でも理由は書かれていないなあ。民俗とは簡単には判らないものですね。
思いっきり推測すれば、部屋からゴミを掃き出すように、さっさと子供が出てくるようにと言うことなのかも。赤子をゴミあつかいは酷いけど、そのくらい軽くという思いがあってもおかしくないかなと。
風に吹かれるかのような姿の理由はなおさら判るわけ無し。

箒神の「石仏」って他にどのくらい現存するんだろうか。googleでは見つかりませんでした。そんなお宝だったとしたら実物を見る事ができて嬉しい。

その横にもう一体、破損した像が残っていました。

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一部ですが、ちょうど箒と顔、流れる髪がわかるところが残っています。大磯独自の造形なのか。他に見つからないから比べようもないけれど。。
posted by harukuni at 21:29| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 神社 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月19日

エゴン・ミュラーの自根

先日のワイン会。「凄い自根の会」でした。

つまり接ぎ木してない葡萄からできるワイン。19世紀後半にヨーロッパをアメリカ東部出身のフィロキセラ(小さい虫です)が襲って以降、全ての葡萄が接ぎ木されていると言って過言ではない。回り回って日本とか、アメリカ西海岸もほぼ全滅です。

また、接ぎ木した方が色々便利なんだそうですよ。従って「やる意味が無い」わけですが、汚染地域でもわずかに残っていたり、チリは歴史・地形上かなり防がれていたりと有るところには少々有ります。その中でも、凄い物が入った(さすがに8種類の全部ではない)会でした。

凄いと自称する以上外せない、ボランジェのヴィエイニュ・ヴィーニュ・フランセーズ2006年がありました。今確認のために楽天を見て青ざめました。ここまで値上がりしてたのか。ちょっと洒落にならなくない?

しかし私の目的はこちら、これ一つと言っても良いんです!

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ちょっと見普通のエゴン・ミュラー、シャルツホフベルガーです。2015年、カビネット。

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但し。一点を拡大すると、見慣れない文字が入っています。

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「Alte Reben」

アルテ・レーベン、オーストリーのワインだと結構見る気がします。でもドイツワインでは記憶にない。最近はあるかも知れないけど、知らない。
あ、今検索してみたらちょくちょくありますね。なるほど、フーバーは書いてそうだなあ。
意味は、ボランジェの「ヴィエイニュ・ヴィーニュ」と同じです。古木=葡萄の木が古いという意味ですが、この会に出ている以上、もちろん自根を示しています。

フィロキセラは砂地には弱いとの話を読んだときに、モーゼル辺りのスレート土壌も耐久性があるんじゃないかと思ったんですが、それ程間違いではなかったようです。ただ、師匠の説明によると相当日当たりが良くて、夏に土壌が高温になる所だと、フィロキセラが生きられないんだそうです。
それに該当したのがシャルツホフベルガーの畑の中の一部だそうで、そこの葡萄はは樹齢100年近くにもなるんだとか。ただ、単独で出したのは、何年前からだと言ってたかな、10年には満たないらしいですよ。

隠しワインで、同じエゴン・ミュラーのシャルツホフベルガーの接ぎ木した方の2016も出されました。年が違うんですが、私も、そして多くの人も、自根の方が柔らかくて滑らか、優しい印象があると言っていました。それでいてまとまっている。非常に淡い色合いですが、弱くはないんです。エレガンスこそ、私がエゴン・ミュラーに最も求めるものです。

まあ、一口飲んで卒倒しそうになるほどじゃないですけども。

とはいえ二度目があるかどうか怪しいです。色々な意味で無理に参加した甲斐が有りました。


え?ボランジェ?
余計なことは書かないでおきます。(そういう感想は私だけだったし)
posted by harukuni at 21:34| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ワイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月18日

四谷須賀神社の驚き

そういや先々週、都議選と言うこともありモヤさまを何だか雑に見ていて、冒頭で神社が出てきたのは気付いたしそれが四谷須賀神社なのは判ったんですが、須賀神社が今はこんなことになっているとは全く知りませんでした。

敢えて言う事もないでしょうが、映画『君の名は。』を見ていない私には驚きでした。まあ大洗の例も有るから最近こういう実在の場所がアニメや映画の聖地になる事は多いです。尾道だってそうだろうし。

そういや雑だったなと思い、連休に見直したら、普段大人しめの福田アナのしゃべりがやたら早かったのにちょっとびっくり。興奮してます。そこまでなのか。

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この坂登るのがきつかったなって思い出しかない(最後に行ったの9年前なんだから当たり前)。当時の写真です。ここは変わってないな。

でも、最初モヤさまを見たときに「四谷でどこの神社だ?」と思い、須賀神社だと判ったあとも結構記憶と違う印象が有りました。一つは、右側に並ぶ神輿庫がずいぶん立派だと言うことですが、今写真を見直してみたら。とんでもない差がありました。

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一の鳥居が無くなってる!


この立派な鳥居をちょっと古くなった程度で取り壊すとは思えないので、恐らく東日本大震災でダメージがあったんだと思います。テレビの画面と写真・実際ではずいぶん印象が変わるので、そのせいかと思っていましたが、そうだったのか。

一の鳥居はなくなりましたが、参拝者ははるかに増えたろうし、テレビの様子でも提灯が沢山で賑わっていて良かった。稲丸の神紋も多かったですが、境内社の天白稲荷(!!)の神紋でしょうね。名前が今の私には結構驚きなんですが、番組で思い出しました。

この回は亀ヶ岡八幡も出てきて、神社好きには良い回でしたよ。
posted by harukuni at 21:12| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 神社 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月09日

素晴らしいワイン会ー1

この1週間くらい、やたらに豪華なワイン会が連続しました。

最初の会はこういう感じ。ほぼ、セレクトは私でした。

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クリュッグヴィンテージ2002,コンクスガード・ジャッジ2007、シャルル・ノエラ、ヴォーヌ・ロマネ1978。

更に興味ぶかしは、まずクロード・デュガのグリオット・シャンベルタン(Griotte-Chambertin)2006。超絶高価なんですが、しかも絶対今飲み頃じゃないんですが、じゃあいつ飲むんだという感じで選びました。

やっぱり今は飲み頃じゃない。若い果実味が薄れてタンニンが目立ちます。でも奥行きとか深みとかは確かにハイレベル。やっぱり、あと何年熟成させたらいいかは想像がつきませんが、今飲んでしまうしかなかった思います。言い訳ですな。

次に、なんとジャフラン(Jafflin)のシャルム・シャンベルタンの1972が有ったので迷わず抜栓。ジャフランはネゴシアンで、かなりたいしたことが無くて(ジャドとかフェヴレイとかの対極)、今はどこかの傘下に入っているはず。そこの、まだ独立していたときのワインがどうなのかは本当に興味がありました。

結論は、評論家の評価は正しいんだなということ。おかしくはないんですが薄っぺらい。まずくはないんだけど美味しさも見えない。
当時のジュヴレのシャルムだからという事もあるかもしれませんが、そういうワインを買っていた(作らせていた)ネゴシアンが良くないという説は説得力があるのかな、と思いました。
以上はまだ1回だけだから断言できませんが、そういうワインを飲む機会が素人には皆無なので、飲むことが出来たことが貴重です。


最後は1959のCh.グレシエ・グラン・プジョー(Gressier Grand Poujeaux)。ムーリのブルジョワです。
1959年はボルドーでも最高のヴィンテージですが、セラーから出して状態を見た時、透明度がよくわからず開けて良いか迷いました。液面も低いし。でも開けちゃえ、という感じで、賭け的に開けました。

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結果は大勝利。ボルドーの熟成をしっかり感じられる、黒い果実や土やスパイス、柔らかいが骨格もあり、ピノ・ノワールとは違う深い熟成が大いに感じられます。加えてかつては青い印象だったろう風味もきれいにアクセントになっています。ミディアム・ボディとはこのこと。これこそ今飲むべきワインでした。

その他多数のワインもすべからく美味しかったです。実に良いワイン会でした。
(これがまず1回目)
posted by harukuni at 19:10| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ワイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月07日

七夕の別れ

夕方、東京の私の住むあたりは晴れていました。西日本の方々に申し訳ない気すらしてしまいますが、珍しく織り姫と彦星が出会えそうな天気です。
そんな日に、個人的にある決断をしました。私は別れます。

ミシャグジから。


なんのこっちゃですが、前にも数回書いたし昔からの神社マニア(と言うより日本の神様のマニア)なら概ね知っているはず。しかしその正体はあまりにも謎です。分布圏すらはっきりしない。概ね東日本と言われてはいますが、名古屋・三重・岐阜など中部圏も含むのかも知れないし。

前にも書きましたが、Wikipediaの「ミシャグジ」はコンパクトながらしっかりした内容だと思います。既に柳田国男が初期の著作石神問答で言及しており、塞の神、道祖神と同一と考えているそうです。
Wikipediaでも触れていますが、諏訪地方、中でも上社のある辺りに「御社宮司社」が点在し、諏訪が元だという説もあります。上社前宮の近くに神長官守矢史料館があり、藤森照信氏設計の建物の方が極めて有名ですが、史料館の前を先に進むと小さい神社があって

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茅野市教育委員会の解説板が立っています。

みさく神は、諏訪社の原始信仰として、古来もっぱら神長官の掌る神といわれ、中世の文献「年内神事次第旧記」・「諏訪御符札之古書」には「前宮二十の御左口神<みさぐじ>勧請・御左口神配申紙は神長の役なり。」とある。このみさく神は、御頭<おんとう>みさく神ともよばれ、諏訪地方みさく神祭祀の中枢として重んぜられてきている。

<>内はふりがなです。なので、「みさく神」もミサグジと読むのでしょう。

史料館の名前の守矢氏は神長官という諏訪上社2を代々つとめた氏族で、トップの大祝家、神氏が諏訪に入る前にこの地方の支配者だったと言われますが、この位にしておきます。押さえておきたいのは、諏訪関連の文献を読む限り「みさぐじ」は道祖神や塞の神と同一視されていないということです。

一方ミシャグジは石神だという説があります(だから「石神問答」なんでしょうか。まだ読んでないので判らないんですが)。この読み、東京練馬区の「石神井」=しゃくじい、これが一番有名かも知れないですね。Wikipediaによると日本民俗大辞典ははっきり否定しているそうですけども。

しかしです。諏訪以外で私が出会った「ミシャグジ」は「み」が付かないことが多いのです。シャグジ(多い表記が「社宮司」)、シャゴジ(同「社護司」)、シャクシ(同「杓子」)など。Wikipediaに多数の呼び名が載せられていて半分くらいは「み」が付きません。
「御社宮司」と「社宮司」であれば「み」は敬称、尊称かも知れませんが、諏訪はそもそもミシャグジなりミサグジで、「み」は切り離せないのではないか。もしかすると、ミシャグジとシャグジは別なのではないか。そんな風にも思います。

そうだ、そうなれば諏訪の他は塞の神(道祖神含む)では無いんでしょうか?と飛びつきたくなるんですが、もう1種類有るのでそう簡単にはいかない。それは「宿神」。

丸ごと書き写すのは流石にまずいので、コトバンクの「宿神」のリンクを貼ります。平凡社世界大百科事典(第2版)のWeb版で、読みはそのままで「しゅくしん」です。
宿神にもさまざまな表記があるとのことで漢字表記が8例載せられ、元の読みは「シャグジ・シュグジ」などだったと思われるそうで、荒神や道祖神などとも習合したとのこと。シュクジンと濁ればシュクジ、シュグジになるかあ。やっぱりシャグジなのかなあ。でも、荒神?
漢字表記の一例に「社宮司」が載っています。しかしそれ以外は私の知っているミシャグジ・シャグジ知識ではあまり出てこない表記ばかりです。

ところで、平凡社世界大百科事典第2版、非常に不思議なことがあります。宿神が芸能民の祀った神で、翁面と習合していた(詳細略)というかなり有名な説が書かれていないのです。

芸能民の宿神になると全く手に負えないので、服部幸雄著「宿神論」を読んで下さい(おい!!)ただ、漢字表記の中に「守宮神」が有って、この神は平安時代に宮中に、しかも八咫鏡を収めた場所の前に祭られていたという、ほぼ同時代の資料(なんと更級日記が含まれる)があると出てきます。

つまり書いた順に並べると、
・塞の神と同じ性格
・諏訪地方の古い民族の祭った神
・石神(アニミズムという意味かな)
・芸能民の守護神
・宮中に祭られる神(宮を守っているってこと?)
というとてもじゃないが共通性をどこに見いだしたら良いのか判らない性格が出てきてしまうのです。ちなみに、最初に書いた分布圏で、確証はないのですが、ここで言う芸能民は西日本中心の可能性が高いと思っています。

そして、なんともう一つ。

限りが無いので説明は止めますが、食料の神と言われる「三狐神」もミシャグジだとも言われてるんですね。(食料の神だと「ミケツシン」なんで違う)
サンコシン→サンコジン→シャンコジン→シャゴジ。うううう。

という感じで、ただひたすら音が似通っていて正体がわからない神を一緒くたにしただけなんじゃねえか疑惑にさいなまれていたわけですよ。ただ、塞の神&道祖神は違うよなあ、「シャイノカミ」とは流石に読まないと思うし、ドウソジンは言うまでも無いし・・

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(熱田神宮の南西そばにある社宮司「しゃぐじ」社。市教委の解説板によれば、三狐神社との表記もあったとのこと)


そして今日が来たのです。

平凡社刊「日本の神」第3巻。P267〜P268で、江戸時代の貧乏神を扱った部分。『白家祭式秘巻』という書物に、貧乏神を祭って送る(流す)際に、3体の人形を作って胸に「貪欲神」、「飢渇神」、「障碍神」と書いた紙を貼るそうなのですが、その神のことを
此ノ三神ヲ三愚神ト云フ<中略>サグシと云フ是レナリ、サグシハ三愚神也

とあると書かれています。
サグシ、またミシャグジっぽいぞ!貧乏神でもあるのか?と思ったら、その少し後に、今度は著者の文で
疱瘡神の一つに出雲の鷺大明神というのがあり、<中略>鷺には塞神と同じサク・サグ・フサグの意味があると解釈されてきた。

塞ぐ=フサグ、神。フサグジン→サグジン→シャグジン→シャグジ・・・・・・

終わった。もういいや。疲れた。

この文章を書いて、全ての思いを出しきりました。ミシャグジさん、あなたは星になったのね。

年に1回くらいは会っても良いかな。



でも三狐神は、食物の神方面の探求は続けます。それと宿神も。何しろ宿神は摩多羅神と同じともされているそうなんですから!
posted by harukuni at 22:03| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 神社 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする